アワの歴史とたくさんの栄養効果
アワはイネ科エノコログサ属の多年草です。エノコログサを原種とするアワです。穂は黄色く垂れさがります。
アワの歴史
アワは江戸時代「ヒエ、アワ」といわれ米が食べられない貧しい農家の人の主食でした。しかし、その歴史は古く、米よりも重宝されていた時代もあります。
〈古代からの穀物〉
日本では米よりも早く、縄文時代から栽培され遺跡から発掘されることもあります。新嘗祭(にいなめさいい)の供物としても、米とともにアワが捧げられ、757年、養老律令にも義倉に泡を備蓄することが定められていました。古くからヒエと並ぶ庶民の主要作物でした。
〈近代における利用〉
第二次大戦後、生産は激減しましたが、今でも、あわおこし、コハダと混ぜたあわ漬け(正月料理)、粟団子、粟餅、酒(泡盛は米でこちらのアワではありません)の原料にもなります。しかし現代は、家畜、家禽、ペットなどの飼料としての用途が多くなっています。
近年、雑穀の栄養価が見直され、米やヒエ、アマランサス、ごまや小豆などと混ぜて食べられるようになり、その存在を見直されています。1粒で稲の3倍の収穫高もあり、栄養成分だけでなく、これからの食糧不足にふさわしい、穀類となることも考えられます。
アワの栄養成分
アワは100gあたり、364㎉と白米とほぼ同じくらいのエネルギー量があります。食物繊維も雑穀の中では決して多い方ではなく、ダイエット効果はあまりありません。しかし、、無機質(ミネラル分)のマグネシウム、鉄、亜鉛、マンガンが豊富で、ビタミンB群の一種、パントテン酸を豊富に含んでいます。
〈ミネラル成分〉
鉄、マグネシウムは貧血の予防にもなり、特に女性は不足しがちの大切な栄養素です。マグネシウムはカルシウムとともに、骨や歯の成分にもなります。亜鉛は味覚をつかさどる「味蕾」の形成に関与し、ジャンクフードやスナック菓子、アルコールが好きな人には、不可欠な栄養素です。最近の若い人の間でも「味覚異常」になる人がいますが、いずれもこの亜鉛が不足していることを原因としています。マンガンは別名「愛情ミネラル」とも呼ばれ、自分の子どもを愛せない、パートナーに乱暴をするドメスティックバイオレンスや虐待行為をする人の中には、このマンガン不足がその原因の一つに考えられています。
〈パントテン酸〉
パントテン酸は糖質、脂質、たんぱく質のエネルギー代謝に必要な酵素を補助するビタミンです。皮膚の粘膜を健康に維持する働きがあり、ニキビ予防や、口内炎の予防などの働きもします。不足すると、頭痛や知覚異常などが認められています。
こういった栄養素は普通の白米には含まれていません。通常は納豆や肉、魚で補うことになります。アワを米に混ぜると、こういった栄養効果が得られます。
アワの用途
アワの栄養価が見直され、今様々なものに混ぜて使うことで、さらに美味しく食べる方法も考えられるようになりました。
〈パンを作る〉
パンを焼く時に雑穀パンを焼く場合は、普通強力粉を混ぜてその中に雑穀を混ぜる形になりますが、強力粉とアワを7:3という生地そのものとして使うという方法があります。アワを入れることで、よりふっくらと仕上がり、色もきれいに仕上がります。
〈天ぷらの衣〉
天ぷらの衣を作る時に、薄力粉、卵、水を混ぜますが、そこにアワを加えることで、よりふっくらと衣が膨らみます。
米に混ぜるときは、アワだけを混ぜるとあまりおいしくありません。米と混ぜるときは他の雑穀と一緒にいれて五穀米、十穀米などにして食べましょう。